JR福知山線の脱線事故の顛末

2007/9/13, 0:34 by Gen

R0015997

 2005年にJR西日本、福知山線の脱線事故が起きたとき、若かりし自分はいろいろと書いた。事故原因と責任を人称(具体的な個人=運転手)に割り振るのではなく、システムとしての原因を考えよう、と。事故調査委員会が出した結論と、それに対するコメントがこちらの記事に載っていたので、かんたんに要点をメモ。やっぱり運転士の責任という結論を出していたのか、という印象。

1.事故調査委員会は、「運転士のスピード・オーバーがこの事故の根本原因だとした」。
2.「この最終報告書が「鑑定書」となって、JR西日本の刑事責任は問われないことになる可能性が高い」。

この記事の筆者が考えるに、

3.「この事故は「脱線」ではなく「転覆」であって、不確定要素をほとんど含まずに、既に提唱されている理論に沿って力学的にその転覆限界速度を求めることができた」。
4.脱線が生じたカーブの半径は304mだった。理論上の転覆限界速度は、106km。運転士が出したのは、105kmをすこし超える速度だった。
5.もしカーブの半径が600mであれば、転覆限界速度は時速148kmであり、事故がおきることはほとんどなかっただろう。
6.「この線路はもともとカーブ半径600mと緩やかだったのに、1996年12月に付け替えられた際に半径304mとなったという。なぜ半径600mを廃止してわざわざ同304mにしたのか、報告書はその意思決定プロセスの分析を放棄している」。
7.さらに、事前に転覆限界速度が運転士に伝えられていなかった。

筆者はこう結論づける。

 「なぜJR西日本は現場のカーブの半径を304mにしたのか。そしてそのときの転覆限界速度を、なぜ運転士に知らせなかったのか。それは、JR西日本自体が、技術の限界を知らなかったからだ。」「組織における科学的思考能力の欠落にこそ、この転覆事故の根本原因がある。」

ポイントはつぎの点か。

*JR西日本が技術的限界を見極めていなかった
*技術的限界に対するフェイルセーフ的な安全マージンを取っていなかった(カーブの半径/運転士に事前に転覆限界速度を知らせるような組織的回路が構築されていなかった)
*事故調査委員会の報告書は、そのことに向き合わず、運転士に責任を押し付けてしまっている(=科学的反省能力の欠如)

 起きてしまった事故は仕方がない。とにかく、「失敗から学ぶフィードバック回路」の構築が大事なことだけは間違いない。事故が起きた際に、調査委員会が設置されるが、その調査委員会はなにを明らかにしようとして設置されるのか?もちろん、事故原因を明らかにしようとするのだろうが、事故原因の「原因」という言葉にはどこまでの範囲が含まれるのか?どこまでの範囲を含めるかについて、コンセンサスができているのか?

 事故調査委員会の目的を、純粋な科学的(物理学的・工学的)原因/直接的原因に限定するならば、たしかに「運転士の速度超過が原因」のひとことで事足りるだろう。だが、再発防止を考えた場合には、フェイルセーフ的な観点を含め、組織の意思決定構造にまで踏み込んで原因を追究し、提言していく必要がある。

 おそらく、裁判資料として、法的な責任の所在を明らかにするために、調査は行われたのだろう。だが、裁判所が確定する法的な責任境界は、再発防止のためには、しばしば不十分なのだ。事故調査委員会は、事故の法的責任の確定(なすりつけ)、という使命を抱えていたため、調査するほうも調査されるほうも、みなが神経をとがらしていたはずだ。そんな状況で、記事の筆者が求めるような、深い事故原因の追及ができるわけがない。1.裁判のための事故調査委員会(科学者とくに工学系の人間や法律屋を中心に構成される)、2.純粋に再発予防を目的とした事故調査委員会(失敗学・組織論・社会科学・経済学・経営学・心理学・経営者など多様な分野の人間から構成される)、と2つの明確なミッションをもった調査委員会に分ける必要があるんじゃないかな、と思った。

 うーん、もう少し考えてみよう。

Tags 社会(学), 科学/認知/進化/環境/身体 | | 12,363 Views | add to hatena hatena.comment 0 user add to del.icio.us 0 user add to livedoor.clip 0 user |  http://blog.genxx.com/wp-trackback.php?p=226
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