文系的株入門part.2

2007/6/16, 15:36 by Gen

 文系的株入門part.1の続きです。今回の記事では、日本株の株価に影響を与えている(と筆者が推察した)ファクターを検討することを通じて、株をやるときにはどのような項目をチェックすればよいのかを、おおまかに示そうと思います。ファクターは5つあるのですが、長くなってしまったので、今回は1.ミクロ・ファンダメンタルズ、2.マクロ・ファンダメンタルズ、3.人間の心理のクセ(下の見出し参照)について。4.需給、5.人気については次の記事で。

  • 実際の株価を決める5つの要素
    1. ミクロ・ファンダメンタルズ(企業の実体価値)
      1. その企業が今後いくら稼ぎそうか
      2. その企業がどれだけ資産を持っているか
    2. マクロ・ファンダメンタルズ(国内外の景気見通し)
      1. 景気が上向きか下向きか
      2. 金利が上がるのか下がるのか
      3. 為替レート
    3. 人間の心理のクセ(テクニカル)
      1. 欲望
      2. 恐怖
      3. バイアス
    4. 需給
      1. 個別株の需給
      2. マーケットに流入するお金(流動性)の需給
    5. 人気
      1. 材料
      2. 知名度

     おおまかに言えば、以上の5要素が複雑に絡み合って実際の株価を決めている。株をやるためには上の5つの要素すべてを把握しなければならない。面倒くさい。以下、簡単に見ていこう。

    1.ミクロ・ファンダメンタルズ(企業の実体価値)について

     これが株価にとって一番重要。まずこれを把握する必要がある。たとえばトヨタという会社全体を100万円で買えるとしたら、誰もが必ず買おうとするだろう。明らかに安すぎる。逆に「mixi」という会社に1000億払うのは明らかに高すぎる(皮肉です)。 つまり企業は(株価×発行株式数で決まる「時価総額」とは無関係に)それ自体で実体価値をもっている。大事なのは、ある企業が、1.今後いくら稼ぎそうなのか。2.いくら資産をもっているのか。結婚相手の例を考えるとわかりやすい。1.は年収、2.は資産に相当する。年収1000万で出世しそうだが借金を背負っている男(成長株)と、窓際族で年収100万だが資産を10億持っている男(バリュー株)、どちらが魅力的ですか?もちろん、年収と資産がまったく同じ男が二人いるならば、出世しそうな男の方が高く評価される(成長率がとにかく重視される)。これらの企業の実体価値は、PER, PBR, ROE, EPSなどのファンダメンタルズ指標でおおまかに読み解くことができる。

     もちろん、「トヨタの実体価値は○○円だ!」と誰もが納得する唯一の正解があるわけではない。企業の実体価値の算出は非常に困難だ(valuationという分野です)。というよりも、算出を行う人、算出の際にどのような理論的立場を取るのかによって、大きく変わってくる。つまり、企業の実体価値なるものは比較的曖昧。とはいえ、決算書を読めるようになれば、大まかな見当を付けることはできる。企業の実体価値は曖昧だから株価は変動し、(大まかな実体価値ゾーンの範囲内で)上に、下に、行きすぎたりするのだ。

    【ポイント】1.株価の実体価値を構成するのは資産と収益。2.株は将来を織り込む存在だから、現時点の収益ではなく、将来の収益見通しに大きく影響を受ける。3.したがって決算書を読んだりニュースを見聞きする場合、「これからどうなりそうなのか」を読み解くのが一番のポイント。4.現時点での収益は少なくても、高い収益率の伸び(成長率)が持続すると予想される場合、株価は高くなる。

    【深めるには】 より正確な説明。PBR・PER・ROEなど、会計学の基本的指標について理解を深め、決算書を読めるようにする必要がある。以下、読みやすいものから専門的なものへ、順におすすめ参考書籍を。『なぜか日本人が知らなかった新しい株の本』。「決算書 株」でAmazonを検索して出てきた本を適当に(どれも似たり寄ったり)。会計学の分かり易い説明は『MBA財務会計第2版』。企業価値について詳しく知りたい場合は『MBAバリュエーション』。なお、株式投資の理論的・概略的・包括的で分かり易い説明は『ビジネスゼミナール証券投資入門』。この最後の本はかなりオススメ(多少数式は出てくるが、理解に困るほどじゃない)。いわゆる証券アナリスト向け教科書で一番読みやすいもの。

    2.マクロ・ファンダメンタルズ(国内外の景気見通し)について

    1.景気の動向が株価にとって決定的に重要なことは簡単に理解できるだろう。日本国内の景気が良ければ内需関連の企業の収益が上がるし、海外の景気が良ければ輸出関連の企業の収益が上昇する。そして収益の上昇見込みを織り込んで、株価は上昇する。現時点での景気の良し悪しよりも、今後景気がどのように動いていくのかが重視される。「株価は半年先の景気を織り込んでいる」とよくいわれる。

    2.また金利の動向もとても重要だ。金利が上昇すると、(投資に回す)お金を調達するコストが増えるため、マーケットに流れるお金の総量が減ってしまう。お金の総量が減ると、株の買い手も減ってしまう。したがって金利上昇は(基本的には)株価にとってマイナス要因。それだけではない。金利の上昇は景気を締め付けるため、「景気がやや悪くなる→企業収益もやや悪くなる」ことを織り込んで株価は下落しやすい。つまり、基本的に、金利が上がる=株価下落、金利が下がる=株価上昇だ。

     ちなみに、中央銀行は、景気が良い時に金利を上げようとする(不景気の時に金利を上げたら悲惨なことになるから)。だから、金利が上がる場合、国内景気は基本的に上向き基調だと判断して良い。金利の上昇をものともしないくらい景気見通しが良いならば、たとえ金利が上がっても、株価は上昇するだろう。ただし、金利の上昇は景気締め付け効果を持っているので、いずれは株価が(将来の景気悪化を織り込んで)下落をはじめるだろう。

    3.為替レートも重要だ。円安の場合、二つの理由で日本の株価は上昇しやすい。第1に、外国人投資家は円安の時に日本株を買いに来るから。彼らは「円安のときに日本株を買い、円高になったら売る」ことで為替差益を得ることが出来るのだ。第2に、円安だと輸出企業の収益が上昇することが予想されるため。これは経済学の基本中の基本ですね。為替レートを決めるのは、各国の景気だったり、金利差だったり、地政学的リスク(戦争起きそうかどうかとか)だったりします。

    【深めるには】まず世界的に経済が連動するさまをごく簡単に理解したい人は『本当にわかりやすい経済学の本マクロ編』。あとはマクロ経済学の教科書を読むことでしょうか。伊藤元重『国際マクロ経済学』もおすすめ。為替に対する実践感覚を養うには、『藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義』がおすすめ。

    3.人間の心理のクセ(テクニカル)について

     人間の心には一定のクセ(傾向性)がある。たとえば、誰しも調子がいい時には必要以上に強気になったり、調子が悪いときには必要以上に弱気になったりする。株価がどんどん上昇しているときは、皆が浮かれて強気になり、ファンダメンタルズ=企業の実体価値を大きく超えた株価で株を買ってしまう(バブル)。もはや上昇余地はほとんど残されていないというのに。そして日経平均株価が8000円という不景気のどん底では、誰も株を買おうとしなかった(景気は循環することを考慮すれば、優良企業の株を一番安く買えるチャンスだったというのに!)。賢い投資家は暴落こそを待ちかまえている。

     人間の心理は(数学的な)期待値を冷静に計算することができない。つまり、欲望(お金を儲けたい気持ち)と恐怖(お金を失いたくない気持ち)が「合理的」な計算をゆがめてしまう。欲望と恐怖が感情を喚起する場合、人間は「非合理的」な存在となるのだ。投資を行う場合、誰もが欲望と恐怖の間を揺れ動く。だから、高値で株をつかみどん底でぶん投げる、といった事態が生じる。そこに克服すべき点とチャンスが存在する。

     このような人間の心理のクセは、(誰もがヒトという種である限りにおいて)一定の傾向性を持つ。一定の傾向性がある限り、ある種の法則性が生まれる。この法則性を逆手に取った指標を、テクニカル指標と呼ぶ。さきほど説明した、企業の収益をベースにしたファンダメンタルズ指標と、このテクニカル指標が、株式投資において2大指針となる。また、テクニカル指標は「予言の自己成就」性をもっていることにも注意しよう。つまり、ひとたびテクニカル指標が完成すると、市場参加者みながその指標を意識しその指標を意志決定に用いるようになるので、テクニカル指標そのものが(人間の心理作用とは無関係な場合も)株価の形成に影響を与えたりする。また、テクニカル指標の裏をかいて仕掛けてくる大口投資家が登場したりする。

     基本的に、テクニカル指標はあまりアテにならないといってよい。テクニカル指標は無意味であることを実証した学術的研究も数多く存在する。とはいえ、市場参加者の多くはテクニカル指標を意識しながら売買を行うため、一定の基礎知識は持っておく必要がある。

    【ポイント】1.欲望と恐怖の間を揺れ動く株式投資を行う際には、誰もが「非合理的」な判断を行いがち。2.だから、自分の心理の歪みについて勉強する必要がある。3.とはいえ、いくら自分の心理の歪みを自覚してもそれを克服するのは難しい。4.したがって、自分の中に確固とした売買ルールを構築し、それに則って売買することが重要(たとえば買値よりも5%下落したら無条件で売る、など)。5.また、感情的な動揺を極力防ぐため、「リスクを取りすぎない」ことを心がける必要がある。たとえば自分の手持ちの全資金を投資したら感情的動揺は大きくなってしまうだろう。6.テクニカルに関する知識はたしなみ程度に理解しておく。

    【深めるには】1.自分の心理のクセ(弱さ)を克服する必要がある。プロスペクト理論など「行動経済学・行動ファイナンス」への理解を深めると良い。慶大教授・小幡さんの「行動ファイナンス投資日記」に目を通したり、『最新 行動ファイナンス入門』を読む。2.『ゾーン』『投資苑』など、人間の投資心理の機微を描いた書物を読み、自分の心理の弱さを自覚する。3.機械的判断を行える冷徹な心を身につけるため、自分の中に確固とした売買ルールを構築する(この点はいずれ詳述の予定)。

    >>>文系的株入門part.3へ続く

    Tags 経済/投資 | | 3,404 Views | add to hatena hatena.comment 2 users add to del.icio.us 0 user add to livedoor.clip 0 user |  http://blog.genxx.com/wp-trackback.php?p=191
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