島が呼んでいる――直島と西表島

2007/3/17, 0:08 by Gen

 この春、時間を取れた方はどこかへ旅立つのでしょうか。比較的最近訪れてグッときたスポットをいくつか紹介しておきます。直島と西表島。国内を旅するなら、島。


直島

 上記写真はつい最近出来た直島の港。港からして気合いが入っている。直島はかなり有名な場所ですよね。直島は、瀬戸内海に浮かぶ、香川県と岡山県の間に位置する周囲16キロメートルの丘陵性の島で、進研ゼミと福祉ビジネスで有名なベネッセコーポレーションがお金をかけて「ベネッセアートサイト直島」というプロジェクトをやっているところです。

「ベネッセアートサイト直島」とは香川県直島を舞台に展開されているアート活動の総称であり、直島の自然や地域の固有の文化の中に、現代アートや建築を置くことによって、どこにもない特別な場所と経験を創造しようとする試みです。(公式ホームページ)

 アートを、美術館という枠組みの中で見るだけではなく、私たちの生活の中に置き、それを欠かせないものだと実感するとき、作品は単なる装飾品ではなく、「自分はそれについてどう考えるのか、なぜそう思うのか」を問い掛けてくる存在になるはずです。(公式ホームページ)

 要は、直島とは、瀬戸内海に浮かぶ小さな島と現代アート(の作品)が溶け込んだ場所であり、その融合具合が、通常アート作品に向き合ったときに鑑賞者に引き起こされる既成の感覚とは異なった体験をもたらす場所なわけです。作品を「鑑賞」するのではなく、作品そのものに取り込まれてしまう体験を狙った場所といいますか。アーティスト的には、ジェームズ・タレル 、安藤忠雄、杉本博司、内藤礼、その他もろもろ。雰囲気をつかみたい方は「直島カフェ」というBlog、実際に訪れてみたい人は「直島への旅」というBlogなんて良いのではないかと。

 「自然」とは、人間によって穢されていないあるがままの剥き出しの野生ではなく、人間が野生に手を加えてはじめて「自然」という一つの価値が生まれる。だから手の加え方次第でたくさんの素敵な「自然」が生まれ得るわけですが、直島なんかはその一つの回答だと思うわけです。1 

 人間が素材に手を加えてある持続的な循環(システム=系)が達成されたとき、「自然」という価値はひとまずの完成を見たといえるのでしょう。その循環は、生態学的なものであるかもしれないし、経済学的なものであるかもしれないし、アイデンティティ的なものであるかもしれない。生態学的には直島はゴミ処理に関するプロジェクトの最先端を走っているらしいし(三菱マテリアル株式会社)、経済学的にもボランティアに頼らない黒字運営を頑張って欲しいと思う。アイデンティティ的循環は達成されてますよね。直島を訪れた人の大多数が「良かった」と感想を漏らしているし、実際に島民は本当に笑顔でした。外からやってくる観光客をため息混じりに見つめる姿は皆無だった。経済学的循環システムが達成されれば、「町おこし」の最良のサンプルになるのだと思います。

 印象的だったのは、会場での住民の笑顔。展覧会には全島民が招待され、アートと縁遠く思える高齢者や中年女性らも、喜々として会場を回り、作家らに率直な感想を投げかけ、談笑していた。これまで家プロジェクトでは、例えば宮島達男は制作の過程で住民の参加を仰ぎ、杉本博司は地元神社の改修に合わせ、神社そのものを作品化する大胆な試みに挑戦。地元コミュニティーの理解や共感なしには不可能な取り組みで、そうした積み重ねが、島民の笑顔を生んだのだろう。(神戸新聞

 もちろん、ちょっと気持ち悪い面はあるんですよ。「センスと教養あるインテリたる者、一度は直島は訪れておかなければならない」みたくなっている面があるのも事実ですから。でもねぇ、やっぱり個人的には行って凄く良かった。地中美術館という安藤忠雄が建築したミュージアムがメインなんですが、その美術館は地上に建っているのではなく、地中に埋め込まれている。

 直島の一連のプロジェクトでは、この美しい自然をいたずらに壊さないよう、建物の大半を地中に埋め込んでいます。地上に覗くわずかな部分でさえ、今や周囲の緑にすっかり覆われ、その姿が見えなくなりつつあります。デザインが視覚的なものだけを指すのではないのと同様、建築もまた表層だけを追求するものではありません。つくり手に最も要求されることは、モノの本質が何であるかを見抜く目であって、作品の見栄えや形云々ではないのです。 (安藤忠雄

 このような、主体性(人間の想像力の誇示)をさりげなく隠すような小さな仕掛けがいくつもあって、それが瀬戸内海の優美さと島の小ささと見事に溶け合って、独特の「自然」という価値が創造されていたわけです。心底くつろげる場所だった。ゴールデンウィークか夏にでも、是非とも行ってみてください。オススメ。

 宿泊施設は2タイプあります。ベネッセ(ご本尊)直営のおしゃれなホテル数棟と、普通の民宿とに別れています。奮発してベネッセのホテルで1泊くらいした後、民宿でくつろぐのが良いのではないかと。民宿のおすすめはつつじ荘。外人観光客なんかはよく民宿に泊まっているみたいですね。

ベネッセ・ホテルの内部も建築的味わいがある

西表島

 対照的に西表島は、とてつもなく「濃い」場所です。映画『ナヴィの恋』に代表されるような「沖縄らしい沖縄」を求めている人は、沖縄本島を訪れちゃダメ。本州の人間が身勝手に憧れる沖縄は離島にしか存在しない。那覇だけを訪れた人はたいていガッカリして帰ってくる。(沖縄の人すみません悪意はないです)

 沖縄の離島にはメジャーなところで大まかに2タイプあって、宮古島系か、石垣島系か、どちらかに行くことが多いでしょう。独断と偏見で言えば、宮古島はとにかく海が綺麗で、ひたすら視覚的に美しい砂浜と海といった感じですね。美しいけれども、すこし「濃さ」には欠ける。対して、石垣島は、海は宮古島ほど美しいわけではないものの、ディープな島をまわりに抱えています。石垣島本島自体はかなり開発が進み、そこではあまり「沖縄らしさ」を味わうことはできない。1泊すれば十分。でも石垣島の周りには、石垣港から船で10分~1時間程度で行くことが出来る、濃い離島がたくさんあるんですよ。

 『ナヴィの恋』的なおばぁとおじぃの沖縄、というイメージをそのまま満たしたい人は、竹富島に行けばいい(石垣島から船で10分)。あそこは「沖縄的なもの」のテーマパークで、イメージをそのまま実現したメルヘンな場所です。でも濃さには欠けるから物足りない。濃い場所でオススメなのは、黒島(一番開発が遅れていて良くも悪くも素朴な沖縄の島)か、波照間島(日本最南端の島。石垣島から船で50分だが、船が外海でかなり揺れるため、ゲロ吐くのは覚悟した方がいい。ゲロボックスも用意されている。人生を捨てたヒッピーが民宿に溜まっていて引き込まれそうになるという難点?もあるが。でも一番息を飲むような海と砂浜がある)か、西表島

 西表島はほんとにspiritualな場所。海から霊がふわっと立ちこめてきそうな気配をもっている。カヤックに乗って川を進むのはオススメ。西表島の特徴としては、森の懐の深さが挙げられる。つまり海だけじゃなくて、森の中へ分け入っていくと半端なく濃いんですな。惹き込まれて遭難死する者が毎年出てくる。陰影が深い末恐ろしい島です。あとは写真を見てインスピレーションを掻き立ててお楽しみ下さい。とにかく、島。島。島へどうぞ。以上です。


  1. 表参道ヒルズも「自然」へのひとつの回答だと思う。安藤忠雄は、表参道ヒルズの床の勾配(傾斜角)を、建物の外にある実際の表参道の道路と同じ勾配(傾斜角)にした。というか、安藤は「自然」を創るのが巧いから評価されているのだろう。 [back]
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2 Responses

  1. がんちゃん Says:

    直島ですか。お恥ずかしい話ですが、初めて聞きました。genさんの話を聞く限り、すごい魅力的な島のようですね。機会があればぜひ行ってみたいと思います。

    >要は、直島とは、瀬戸内海に浮かぶ小さな島と現代アート
    >(の作品)が溶け込んだ場所であり、その融合具合が、通常
    >アート作品に向き合ったときに鑑賞者に引き起こされる既成>の感覚とは異なった体験をもたらす場所なわけです。作品を>「鑑賞」するのではなく、作品そのものに取り込まれてしま>う体験を狙った場所といいますか。

    なるほど。これはおそらくNPO法人の砂浜美術館が主催しているTシャツアート展にも当てはまるのではないでしょうか。作品そのものに取り込まれてしまうという感覚、ぜひ一度味わってみたいものです。

    P.S 私の故郷である喜界島もおススメですよw

  2. 直島 宿泊 おすすめって素敵だと思います。 | Travel advisory&Staying information blog Says:

    […] blog.genxx.com � 島が呼んでいる――直島と西表島ではないかと。民宿のおすすめはつつじ荘。外人観光客なんかはよく民宿に泊まっているみたいですね。 対照的に西表島は、とてつもなく「濃い」場所です。映画『ナヴィの恋』に代表されるような「沖縄らしい沖縄」を求めている人は、沖縄本島を訪れちゃダメ。本州の人間が身勝手に…はてなブックマークより […]

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