異常気象のヘタレ投資論(ごく初心者向け)

2007/3/13, 0:22 by Gen

 Economist.comの記事“Come rain or come shine”(リンク先有料)からいくつか要点をメモし、それを基に、ヘタレな投資論をいくつか書いてみます。

 まず要旨メモから。最近、異常気象を投資対象とするヘッジファンドが増えている。気象の変動幅が増えるにつれて、気象変動を利用してお金儲けをしようという関心を持つ者が増えてきた。ヘッジファンドは、概して、3つの商品を好む。1.気象デリバティブ(weather derivatives)、2.災害債券(catastrophe bonds)、3.サイドカー(sidecars)だ。それらの商品は、たとえばある特定の都市の気温や降水量をターゲットとしている。もちろん、もっと創造的な商品、たとえば特定の場所の波の高さや湿度といったものを対象化することも可能だ。

 気候を対象とする商品を一番利用しているのはエネルギー関連会社、もしくはエネルギー変動リスクを扱うヘッジファンドだ。彼らはマーケット全体の46%を占めている。なぜなら、天然ガスの価格は気温が暖かいか寒いかによってかなり影響を受けるからだ。農業部門は12%を占めている。農業部門のマーケットはより大きくなりうるが、政府の農家への保障が存在するため、マーケットの成長は一定レベルに抑制されている。貧しい国々を援助する機関もこれらの商品を利用してきた――貧しい国々が干ばつに対処するのを手助けするために。

 これまでのところ、投資のメインプレイヤーである年金ファンドは、気候に関する商品に手を出すことをためらってきた。しかし、金融業界は彼らを勧誘し続けている。たとえば、アメリカのハリケーン、ヨーロッパの竜巻、日本の地震その他など――9つの異なる種類のスワップを組み合わせた商品も開発されている。

 以上が要旨の引用ですが、さて。たとえば、ある年のお米の市場取引価格を対象とした穀物の先物取引なんかは、間接的に気候を対象とした投資商品といえますね。そういう商品はこれまでも長らく存在した。新しいのは、ダイレクトに気候そのもの――気温や降水量など――を対象とした商品が生まれてきたこと。

 で、友人に向けた、ヘタレ投資論(投資のごく初心者向けです)。当たり前ですが、不確実性や変動(ボラティリティ)が存在するものはすべて投資対象となるんですよ。株価しかり、為替しかり。値動きがあるというただそれだけのことで、チャンスがやってくる。株価が値上がりしても値下がりしても、そこに変動さえあれば儲けるチャンスが存在する。株価が上昇すれば儲かる、というのはただの素人。下落したって儲けなくちゃいけない。その意味では、今後、あらゆる不確実性や変動をターゲットとした商品が開発されるんでしょうね。人間性の観点から言って目を覆いたくなるような商品も生まれてくるでしょう、きっと。

(たとえば9.11テロがあった年の米国株価のボラティリティは40%を超えた)

 投資の本質は、リスクの分散ということです。たとえば、暖冬によって引き起こされる――冬物衣料品の売り上げの落ち込みといった――収益の減少可能性(リスク)を、ひとつのアパレル会社が抱え込むのはキツイ。でも、そのリスクを、数多くの投資家に投資商品を通じて少しずつ分散することによって、そのアパレル会社は気候変動リスクをmanageすることが可能になるわけです。株の場合も同じですね。ベンチャー企業が成功する確率は極めて低い(ドリコムのような詐欺企業を見よ。mixiだって絶対にコケると思う)。そのリスクを株券によって分散すれば、皆が少しずつ(耐えられる程度の)リスクを抱え込むことによって、(社会全体として)思い切ったことができるようになるわけです。その意味で、イノベーション((c)シュンペーター)が牽引する資本主義の発達と、金融商品の発展は、不可分な関係にあるわけです。保険も同じですね。保険も立派な投資商品です。一人の病気リスクを全員で少しずつ負担することによって、ある人物が病気をmanageすることを可能にしているわけです。

 もちろん、為替商品や気候商品と、株とでは、大きな違いが存在します。為替商品や気候商品や保険は、ゼロサムゲームです。対照的に、株はプラスサムゲームです。詳しくはググって欲しいのですが、誰かが得をすればその分誰かが損をする、というのがゼロサムゲームです。全員が得をする可能性がある、というのがプラスサムゲームです。為替をやる場合、あるホールケーキが存在して、それを皆で取り合っているようなものです。しかし株の場合、ケーキの大きさがどんどん膨らむ――経済全体が成長する――可能性があるわけです。だから株取引は一番メジャーな商品となっている。株はギャンブルと同じです。ただし、パチンコや競馬はゼロサムゲームですが、株はプラスサムゲーム、という大きな違いがある。

 さらにいえば、投資の本質とは、「歪みを正す」ことでもあります。たとえば、新幹線の自由席車両に乗るためにホームに並ぶ場合を考えてください。誰もが座席に座りたい。だから、彼は、1号車(階段から最も遠い車両)の出入り口に並ぼうとする。皆遠い場所まで歩くのを嫌がるから、1号車なら空いていると彼は考えた。でも、そのことに気づくのは彼だけじゃない。そのことに気づく人が増えれば、1号車は混み始める。やがて、1号車は他の車両と変わりない混雑状況となるでしょう。

 つまり、皆の「自分がいい思いをしたい」という私利私欲を追求した結果として、社会全体として最もダメージが少ない形でのリスク分配(お金が無い人は投資をしない)と、最適な資源分配効率が達成される、というのが資本主義の強みなわけです。資本主義社会における各プレイヤーは、各々の判断に基づいて、それぞれ対処できる程度にリスク(損する可能性=私利私欲=リターンの期待)を負担することによって、最適な分配効率を達成していくわけです。社会主義のように一部のエリートの独断的な知恵だけじゃなくて、皆の資金と知恵が(知らず知らずのうちに最適な形で)マーケットに集積されていくわけです。もちろん、わたしは安易に株式投資を薦めるつもりはありません。株をやりはじめた大多数の初心者は涙を流しているし、証券会社や銀行の宣伝は詐欺まがいです。このことについてはヘタレ投資論2で詳しく書くことにします。

Tags 経済/投資 | | 3,530 Views | add to hatena hatena.comment 0 user add to del.icio.us 0 user add to livedoor.clip 0 user |  http://blog.genxx.com/wp-trackback.php?p=183
1 Star2 Stars3 Stars4 Stars5 Stars (No Ratings Yet)
Loading ... Loading ...


 Amazon Related Book Search

Leave a Comment

Please note: コメント欄で引用をおこなう場合に、blockquoteボタンを利用されると便利です。スパムフィルターが設定されているため、管理者の承認があるまで投稿が反映されない場合があります。気になる場合はamourix@gmail.comまでメールでお知らせください。