デザインする、ということ

2005/9/7, 14:40 by Gen

11:53:53
 まずは、『デザインのデザイン』より膝打ち部分を抜き出し。アートとデザインの差異について。

 アートは個人が社会に向き合う個人的な意思表明であって、その発生の根源はとても個的なものだ。だからアーティスト本人にしかその発生の根源を把握することができない。そこがアートの孤高でかっこいいところである。一方、デザインは基本的には個人の自己表出が動機ではなく、その発端は社会の側にある。社会の多くの人々と共有できる問題を発見し、それを解決していくプロセスにデザインの本質がある。問題の発端を社会の側に置いているのでその計画やプロセスは誰もがそれを理解し、デザイナーと同じ視点でそれを辿ることができる。そのプロセスの中に、人類が共感できる価値観や精神性が生み出され、それを共有する中に感動が発生するというのがデザインの魅力なのだ。

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 同じく、素晴らしく面白い『デザインのデザイン』より引用。

 何かを分かるということは、何かについて定義できたり記述できたりすることではない。むしろ知っていたはずのものを未知なるものとして、そのリアリティにおののいてみることが、何かをもう少し深く認識することに繋がる。たとえば、ここにコップがあるとしよう。あなたはこのコップについて分かっているかもしれない。しかしひとたび「コップをデザインしてください」と言われたらどうだろう。デザインすべき対象としてコップがあなたに示されたとたん、どんなコップにしようかと、あなたはコップについて少し分からなくなる。(中略) しかしコップについて分からなくなったあなたは、以前よりコップに対する認識が後退したわけではない。むしろその逆である。何も意識しないでそれをただコップと呼んでいたときよりも、いっそう注意深くそれについて考えるようになった。よりリアルにコップを感じ取ることができるようになった。

 机の上でほおづえをつくだけで世界は違って見える。ものの見方や感じ方は無数にあるのだ。その無数の見方や感じ方を日常のものやコミュニケーションに意図的に振り向けていくことがデザインである。

 美しい洞察だ。デザインとは、日々自明なものと見なしているルーティーンを、ひとたび解体し、組み立て直すことによって、<それ>自体のより深い認識に至ろうとする、そしてあわよくばその行為(デザイン)を通して他者と別の形でコミュニケートしようとする試みである。でも待てよ。それって「デザイン」の特権だろうか。

 学問や小説も、おそらく似たような行為だ。当たり前の日常を疑い、いったん解体し、言葉によって再び「デザイン」し直す。「デザイン」の鮮やかさによって、作品(論文)の評価が決まってくる。その意味で、ある文章は、多かれ少なかれ、「美的に」判断される。鋭い文章に接したときの驚嘆は、鮮烈なアートに触れたときの畏怖の念と、それほど違いはない。

 美しい(あるいはマッドな)デザインに触れる。息を飲む。「ものごとは別の見方もできる」と知る、すると他者のリアリティを尊重できるようになる。そしてそれ以上に大事だと思うのが、自分自身が何かをデザインする立場に立ってみる、少なくとも立とうとすることだ。コップをデザインしようとした途端、普段当たり前のように接していたコップが、一体何なのかわからなくなる。

 デザインしようと苦しみもがいた経験のある人間は、他者(の作品)を信頼できるようになる。自分がデザインしようとしても大変なんだ、だから他者のデザインも結構大変なんだな、と想像するようになる。だからとにかく、デザインしてみよう。自分が手がけている分野で、深くデザイン作業に集中すれば、他者の「作品」もそれなりに深いんだなって痛感する。あるいは馴染みのない分野でデザインにトライすると、その分野の作品を前よりも親密に味わえるようになる。

 教養を身につけるってのは、一筋縄じゃいかないと知ることだ、と思う。たしかに知識は大事だ。知識を身につければ世界をわかった気になる。でも教養を「身につけたい」ならば、知識を吸収するだけじゃなく、それを活かして、とにかくデザインする側に廻ってみることだ。写真が好きならカメラを持とう。音楽が好きなら楽器を持とう。恋してみよう。企画してみよう。書いてみよう。と、誰に向けたのかわからない、宛も無き手紙を書いてみました。

Tags アート(音楽/映画/写真その他) | | 2,522 Views | add to hatena hatena.comment 0 user add to del.icio.us 0 user add to livedoor.clip 0 user |  http://blog.genxx.com/wp-trackback.php?p=140
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