大学生活とは

2005/6/25, 15:13 by Gen

08:02:17
 「大学1年のころはどう生きてましたか?」という質問メールをもらったりした。いろいろと考えてみたものの、やはり、「生きていた」としか言いようがない。何一つ完成されたものはなく、完成させることなく、ただただ前のめりにその日その日を過ごしていた。思い起こせば、あれこれ懐かしくて、体の芯がきゅっとなる。これが郷愁、ノスタルジーにちがいない。まず、第1の幸運は、文Ⅲ13組という(語学に基づく)東大のクラス制度が、幾人かのヤバい奴らに出会わせてくれたこと。仲人となってくれたフランス語に感謝。映画・音楽・写真・文学などに対する造詣の深さ、哲学・思想に対する身のこなし方、ファッションの感覚、そして何よりも、どこか「わかっている」気怠い空気感。やや排他的な空気を漂わせつつ、でも、いつでもそこに帰れるという安心感があった。思うに、あの仲間たちと醸し出し共有していた空気感は、大学生活のひとつの理想型だったのだ。

 9人程度の仲間だったのだが、それぞれバラバラで、でもどこかに何人かがたむろしていて、見つけると、いつもニヤっとしてしまった。3人を除いては全員留年の道を選び、今、多くは院進学を目指している。東大には「進学振り分け」という制度があって、3年から、専攻希望に応じて、バラバラに分断される。それぞれ(イ)バラバラの道に進んだ。仏文、教育学、美学芸術学、哲学、表象文化論、宗教学、インド哲学、そして自分ともう一人は心理学。そのもう一人は心理学に嫌気がさし(?)、1年後に教育心理学へと移っていった。

 なぜあの仲間たちと居て、それでいて、自分が、実験を組み立て数値で世界を語る(準理系学問である)心理学を選んだのかはわからない。たまにかつての仲間たちに出会うと、統計で世界を語るやり方をパロディしてみせるのだった。それでも、心理学を選び、自分の価値観はたしかに変わった。実証主義の変な檻に捉えられてしまったのか、あるいはバランス感覚が身に付いたのかはわからない。この先の自分の生き様と研究業績が語ってくれるのだろう。

 とにかく、東大で生きることに対して、まやかしなりにも誇りを持てたのは、あの空気感で大学1,2年を過ごしてきたという自負があるからだった。大学という存在、大学という「場」それ自体がひとつの芸術である、と誰かが言ったらしい。その意味で、彼らと共有した空気は、芸術に他ならない。この根拠のない「ニヤっとしてしまう感覚」こそが大学生活最大の財産といいたくなる。言い切るとバカらしいので、言わないが。でも、彼ら以上に「凄い」と思わせる人間に大学で出会ったことは、まだ、ないのかもしれない。

08:14:36
 大学1年時を郷愁チックに回顧する上に書いた文章の続き。もうひとつの軸は、恋愛にあった。これは言い切れる。それまで何度も恋愛を重ねてはきたのだが、大学1年時の恋は、自分をまるごと捉えてしまった。自分の状態、好きだった相手の特性、いろいろな要因が偶発的に作用しあったのだろうとは思う。大きな恋愛は、いろいろなもの・ことがひとつの時/場所に結節した場合にしか立ち現れないという意味で、芸術だ。臍の緒切って18年来、はじめて、生きることを丸ごと肯定的に飲み込ませてくれた、この場所に存在することを感謝させてくれた、でも逆側からいえば、自分という存在の境界線を感じさせてくれた、とことん愚鈍な一面を痛感させてくれた、いやらしさ・ちっぽけさを叩きつけてくれた、彼女にはありがとうの一言しかない。

 本当に、何をやったって自由、自分の動きの軌跡がそのまま自分の深さに変換される、大学1年は、人生が配給してくれるひとつの宝物だ。この宝物を、金銭的価値あるものに仕立て上げるのも、あるいは自分の記憶の中だけで輝く秘宝に磨き上げるのも、すべて、自分にかかっている。もちろん、出会いは偶然だ。可能性は、多くの場合、自分の外から、偶然投げ込まれる。そのときに自分を閉じない、自分をひらいておくことだけ。自分の可能性を狭めているのは、多くの場合、自意識だ。「あの場に参加するのは気後れする」「ひよってしまう」。この、理想の自己イメージを守ろうとする防衛機制にだけは、注意すべきだと思う。これにさえ気をつけて、自らを委ねて、健康には留意しながら、生きてゆければ、偶然が偶然に折り重なり、つまりいろいろな偶然が自分という身体に結節して、「これだ!」という感覚を得られるのだと思う。偶然の接続の仕方は、自己責任なのだ。

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