学問という「考え方」

2005/4/21, 15:58 by Gen

02:37:30
 全然話は変わるけれども、勉強時間の配分が難しいなって最近とみに感じますね。何に配分するかといえば、1.方法論(スキル)、2.知識、に対して。

 たとえば心理学ならば、脳内の神経学的構造の知識とか、抑うつの人に典型的な認知的推論の傾向についての知識とか、色々ある。社会学や文化人類学ならば、フーコーが権力をどのように捉えていたかとか、誰が社会・文化をどのように分析したかといった知識など。これらが、2。

 学問的な話が好きな人は割とたくさんいる。読書好きな人はとにかく2の知識を吸収しているわけですな。けれども、学問的生産に必要なのは、まず1の方法論だという気もするわけです。心理学でいえば、実験デザインの仕方、データの統計的処理の仕方、引用文献の扱い方(論文の書き方)など。社会学や文化人類学でいえば、社会調査法(フィールドワークの仕方や質問紙の作り方や統計処理の仕方)とか文献リサーチ技術などなど。

 高校生かなんかで学問に憧れて大学入って、でも「やっぱ就職」ってなる人は、1.の方法論にうんざりする場合が多いんだろうな。1.は楽しくないし。でも、ただの知識人と研究者の分水嶺は、1のスキルの有無にある。一次的情報を生産する手段を握るってことですが。わたしもこれまで1.を疎かにして生きてきたので、焦りはじめましたが。教授に「おいおい、いいかげん岩波文化人的な生き方はやめとけ」って諭されたし。

 また、文系諸学問の場合、1.方法論と2.知識が明確に分離できるわけじゃないから、話がもっとややこしくなる。わたしたちが読書するとき、純粋な知識だけじゃなくて、概念的分節の仕方を学んでいるわけでもある。簡単にいえば、ある現象をどのように切るのか、というツールを学んでいる場合もある。身近な例だと「必要条件/十分条件」とか。記号論だと「シニフィエ/シニフィアン」とか。「存在論的/認識論的/方法論的」とか。「外延/内包」とか。「社会的/心理的」「究極要因/至近要因」とか。「アポステリオリ/アプリオリ」とか。

 で、研究者志望の人でなくても、読書する際に、これらの「概念ツール」をうまく吸収できる人は、言葉巧みにあれこれ書いたりできるわけですな。プチ社会評論なんかをBlogにしたためたりして。脱したいけど、自分もそのクチだし。

 つまり、たとえば宮台真司が好きな人がいるとして、3タイプに分かれると思うわけですよ。a.宮台の社会評論を面白がって読み知的興奮大満足タイプ。b.宮台の社会評論から上記の「概念ツール」を炙り出して、自分が考える際にもそれを利用しちゃうタイプ。c.宮台評論には飽きたらず、「その発言の根拠となるデータは何よ?」と社会調査法や統計を勉強し始めるタイプ。『反社会学講座』が好きな高校生は多いけど、あの本の楽しさは「c.的に考えれば世界は違って見えますよ」と教えてくれるところにあるのだろう。

 学問ネタでメシを食えるのはc.の人間か、あるいはb.に秀でてる人(立花隆、とか)。b.で生きてゆけるなら一番楽しいけれども、小林秀雄じゃあるまい、そんな才能は自分にないし。(福田和也は「100冊読んで1冊書く」が信条だそうですが)。とにかく、「概念ツールの吸収」を意識して読書すれば、今後役立つことがあるかもしれませんよ、意識してみましょう、とお節介してみるテスト。

 わたしたちの身の回りで、どのような概念ツールが日常言説の中に潜んでいるのかを観察すれば、さらに楽しい(反射的に社会が内在化している価値観が明らかになるから。文芸評論家がここ数十年強い力を持っていたのは、彼らがこの分析に秀でていたから)。もっといえば、一般的な概念ツールは、どこまでが生得的で、どこからが文化的社会的構築物なのかを見定めるのも楽しい(どの文化に住む人も「信念」「欲求」といったタームで現実を解釈しようとする。つまりこれらは生得的・普遍的な「素朴心理学」なのだ)。(「一つの言語を想像するとは、一つの生活形式を想像することである」 Witgenstein)

Tags 思想/哲学/言語(学) | | 2,760 Views | add to hatena hatena.comment 0 user add to del.icio.us 0 user add to livedoor.clip 0 user |  http://blog.genxx.com/wp-trackback.php?p=101
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